東名高速での観光バス&乗用車の事故・バス会社の危機管理対応に感心

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2017年6月10日の朝に、東名高速道路の新城パーキングエリア付近で起きた事故は、医師男性(62)の運転する乗用車が中央分離帯を乗り越えて対向車線に飛び出し、観光バスに突っ込むというものでした。

事故当事者撮影の車載動画が即日出回るのは異例

このニュースで、かなり異例の展開だと感じたのが、事故の瞬間の映像が即日公開されたことです。それも、通りがかりの第三者が撮った映像ではなく、事故の一方の当事者が撮影した車載カメラ映像が即日出回ったという点が、異例中の異例だと思います。

これについては、事故の当事者である観光バス会社が今夜発表したリリース文を見ると合点がいきました。

東神観光バスのプレスリリース(http://www.toshin-kanko.jp/)

 

 

これを拝見しますと、まずは事故を発生させたことや、怪我をした乗客へのお詫びが書かれており、それに続く形で、状況の説明と、同社がとった事前の安全対策や事故の対応が事細かに書かれています。

このリリースによって、マスコミは記事を執筆する際に必要となる情報がたくさん得られます。

 

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安全面に配慮した機材や運行管理など詳細に書かれている

事故に遭った観光バスは平成27年式のいすゞガーラで、衝突被害軽減ブレーキや車間距離アラート機能が付いている新鋭の機材です。

 

ガーラ(画像出典:いすゞ自動車)

東神観光バスが導入した「いすゞガーラ」(画像出典:東神観光バス)

しかも通信式の運行管理システムを搭載しており、運行状況がリアルタイムに送信される仕様となっていました。特に、「衝突記録データが動画と共に弊社運行管理部のパソコンにアラーム」と書かれている通り、事故の瞬間の動画が運行管理部門に通信で伝送されていた点が凄いです。通常のドライブレコーダーですと、事故車のドラレコ本体からメモリーカードを取り出す必要があり、現場対応等で大混乱している中で、運行管理部門がスピーディーに映像を入手するのは難しいかと思いますし、場合によっては捜査当局が証拠として先に押収していく可能性もあります。その点、自動的に運行管理部門に送信されていたのであれば、これほど素早く動画が公開されたのも合点がいきます。

東名高速で事故に遭ったバスが搭載している通信型タコグラフが凄い

また、乗客へのシートベルトの着用案内と点検、運転士の点呼、健康診断等の実施についても網羅するリリース内容となっています。特に、このプレスリリースからは、事故発生後わずか30分ほどで、同社の管理職社員および契約している事故調査会社担当者が事故現場に到着していることも分かります。これは通信式の運行管理システムによって、バスの現在地を含めた運行状況が逐一把握できているからこそ成し得たものです。

交通事故では異例の「映像がご入用の場合はお問い合わせを」

加えて、事故の瞬間を記録したドライブレコーダー映像や写真が存在し、それを「ご入用の場合はお問い合わせください」というメディア向けのコメントが書かれている点(もちろんプレスリリースですから本来メディア向けなのですが)、これはいわゆる新製品のプレスリリースやニュースリリースではよく見られるコメントですが、交通事故におけるリリース文では極めて異例のものと思います。

この点については、東神観光バスの日頃からの安全への取り組みや、運転時の自社運転士の対応に落ち度がなく、対向車線を飛び出して飛んでくる乗用車を防ぎようがなかったという、いわば「もらい事故」で、なおかつ過失割合が「10対0」である点を暗に示していると感じます。

実際、私は保険会社でもありませんし、交通捜査関係者でもありませんから、安易なコメントは控えなければならないと思いますが、それでも今回の事故は、バス会社に落ち度は全くなく、「10対0」の過失割合にならなければおかしいと素人ながらにも思います。 ←バス側が制限速度を守っていたかについての言及がリリースに書かれておりませんでしたので、取り消しいたします。

素早く先手を打つ危機管理対応

そういった点も含め、バス会社が異例の動画公開に踏み切った点は、「事故は前触れなく瞬時に起きており、バス運転手はどうやっても避けきれない事故だった」「バス運転手がとっさにハンドルを切って路肩に車体を擦って速度を落とすなどの適切な行動をとっている」「バス会社の日頃の安全管理体制に落ち度がない」といった情報を、メディアのみならず一般の人々にも開示し理解してもらう狙いがあるのだろうと思います。バスが絡む事故においては、時として、「バス会社の運行にも問題があったのではないか」という印象を持たれたり、報じられ方をされたりする場合があります。その点で言えば、今回の同社の対応は、そういった事故とは一線を画す意味でも、素早く先手を打ったものだと思いますし、危機管理対応としては、なかなかのものではないかと感じました。特に、メディアが記事に書く際に必要とするであろう情報を理路整然と列挙し、それをスピーディーに発表している点には、とても感心しました。

 

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ネットの煽り対策にも先手

それと、同社のウェブサイトを見て気付いたのですが、事故に関するプレスリリース以外への内部リンクページ(会社概要やサービス案内など)が非表示(リンクそのものが見当たらない)となっています(見ようと思えば見る方法はありますが)。もしかすると、事の重大性を鑑み、取引先等や関係者等にマスコミ取材が及ぶなどして迷惑を掛けないようにする等の理由で、情報提供はプレスリリース本文記載内容あるいは電話等での直接問い合わせに集約し、それ以外は一律非公開としたのかもしれません。

結果的に、これほどの大事故にもかかわらず、ネット上がさほど荒れていないように見受けられます。特に、大事故や大事件が起きた際には、ウェブサイトに公開されている情報や既出のニュース記事等を引用して、そこにネットから見つけてきた関係者のものと思われるSNSの情報や顔写真、過激なタイトル、さらには憶測やネット掲示板の投稿等を盛り付けて読者の関心を煽る手法がよく用いられます(例えば「顔写真は?SNSは?自宅は?」などの煽りタイトルをつけたようなブログ記事が検索上位に表示されたりしますよね)。それらは、瞬間的なアクセス数を大量に集めることで報酬を稼ぐ、いわゆるトレンドアフィリエイトブログと呼ばれるものですが、今回の事故では、そういったアフィブログの餌食となって従業員や取引先等が晒し者になるようなことが、ある程度は防げているのではないかと感じます(※なお、当ブログでは事故の瞬間の映像の埋め込みは自粛しております)。

あと、あえて付け加えるならば、亡くなった乗用車のドライバーに対するお悔やみの言葉が一言でも入っていればさらに完璧と思います。ただ、事故に遭われて大混乱の中ですし、言及がないのはやむを得ないものとも思います。

衝撃的な事故映像の割にバス側死者ゼロで安全性向上も印象付ける

一方で、あまりに衝撃的な映像ゆえに、「自動車に乗るということは、やはり常に危険と隣り合わせなのだ」ということを視聴者に自戒させるものとも言えそうです。今回公開されたような衝撃的な大事故の動画は、YouTubeでは海外のものが多数上がっていますが、日本国内で起きた事故の瞬間の動画、しかも事故当事者撮影のものでこれほど生々しく、しかもタイムリーなものは、これまで存在しなかったのではないかと思います。恐らくバス会社側においても、車載動画の公開によって、利用者のイメージダウン(例えば「バスに乗ることは怖い」など)につながらないかという不安が頭をよぎったかもしれません。また、事故の一方の当事者が亡くなるほどの事故の動画を公開することへのためらいもあったのではないかと思います。ただ、事故の相手が亡くなり、本人証言が不可能である点を踏まえると、客観的な事実となる動画の存在意義は非常に高いと言えます。

加えて、これほどの衝撃的な背景があった事故にもかかわらず、バス側に死者が出なかった点は、バスの車体剛性、特に前面やルーフの骨格を強化することで、乗員乗客の生存空間を保つなどの配慮がなされた新しいバスが使われていたこと、そして、乗客の多くがシートベルトを締めていたことが大きく作用したと言えます。

フロントフレームや運転席周辺に強度部材を使用し生存空間を確保(画像出典:いすゞ自動車)

ヨーロッパ安全基準ECE基準R-66準拠のロールオーバー対策(画像出典:いすゞ自動車)

2016年1月に軽井沢で発生したスキーバス転落事故(乗員2名と乗客13名が死亡)では、車体の変形が大きかったことに加え、シートベルト非着用の乗客が多かったことが被害拡大につながった一因とされています。それ以来、バス事業者においては、乗客へのシートベルト着用を以前よりも強めに要請するようになっており、そのことが今回の事故においても効果を発揮した格好です。

いずれにしましても、大変な事故であることが映像からもよく分かります。事故に遭われた方々の心身の回復と、亡くなった方(乗用車を運転していた医師)のご冥福をお祈りします。

 

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