カセットテープ音源のデジタル化における注意点と今後への期待

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このウェブサイトの読者の中には、かつてカセットテープにお世話になった人もいらっしゃるかもしれません。かくいう私も、カセットテープ全盛期に育ったアラフォー世代です。引越しの際にかなりの量を処分したものの、捨てられずに残ったカセットテープが、自宅の押し入れにたくさん眠っています。

その一方で、肝心のカセットデッキ(A&D)は、長年にわたる放置を経て動作しなくなり、引越しの際に処分(粗大ゴミ…後悔しています)してしまいました。

また、ウォークマンプロフェッショナル(D6C)は、使用感のほとんどない極上品を所有していたのですが、こちらもかなり以前に処分(ヤフオク…今なら当時売った価格の3~4倍以上つきます)してしまいました。以来、当方が有するカセットテープ機器は、車から取り外したままのカーオーディオのみという状態です。

 

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カセットテープはほぼ絶滅状態だが魅力は衰えない

ところでカセットテープは、MD(ミニディスク)の登場、そしてMP3などの圧縮音源を収めるソリッドオーディオの登場と普及によって、かつての隆盛が影も形もなくなり、ほぼ絶滅したような状況なのはご承知の通りです。しかしながら、カセットテープの持つガジェットとしての魅力は、未だに衰えていません。とりわけ、技術革新によって、コモディティ化した半導体チップを用いるソリッドオーディオと比べると、カセットテープは、やはり精密機器そのものです。

格安のカセットテープ機器も売られてきましたが、高音質で録音あるいは再生をしようと思えば、精密なメカニズムと精密な調整が必要でした。実際、ダイレクトドライブモーターや、クローズドループ・デュアルキャプスタン、3ヘッド、アモルファスヘッド、スーパーGXヘッド、面圧式のテープスタビライザー等々、精密加工を要する高音質化技術が続々と開発され、それらを搭載した高性能デッキが多数リリースされました。

もちろん、機械的な技術のみならず、電子回路や電源装置なども高音質化が図られ、その相乗効果により素晴らしい音質をもたらしてくれました。高性能のハードを用いて録音すると、録音前の音源(CDなど)と録音後のテープを聞き比べても違いが分からないほど高音質に再生できることに、若かりし頃に驚愕したのを今でも覚えています。それほど、カセットテープの高音質技術は素晴らしい水準に到達していたわけです。

カセットテープ機器は機械的な精密さが生命線

カセットテープ全盛期に、私は据え置き型カセットデッキやミニコンポ、あるいはヘッドホンステレオやカーステレオを利用して、カセットテープによる音楽を満喫しました。その中で、カセットテープの再生や録音にまつわるトラブルに何度も遭遇しました。

斜行によるテープ表面の傷み(折れや筋が入る等)やキャプスタン&ピンチローラー部への巻き込み、録音・再生ヘッド表面とテープ表面の角度や位置の微妙なずれ(アジマスエラー)による高域特性の劣化や、位相がずれた感じになりボーカルが中央に定位しない症状、あるいはドルビーNR(ノイズリダクション)の調整不良による不自然な抑揚感などです。

2016年12月開催の大ラジカセ展で展示されていたカセットテープ機器の実物の内部

これ以外にも、音の震えや揺らぎに直結するワウ・フラッターの悪化や、テープスピードの微妙なずれなどの問題も挙げられます。

若かりし頃、これらの問題に直面し、TAPEXブランドのテストテープを購入してアジマス調整を自分でおこなうなど、とにかくいろいろな対策を講じました。その経験から、カセットテープを用いる音楽システムは、機械的な精密さが生命線だと確信しましたし、その考えは今でも変わりません。

懐かしのカセットテープこそ適切な機器で使うべき

これらの経験から言えるのは、今、量販店や通販などで売られている、海外製の格安カセットプレーヤーの使用は避けるべきだという点です。例えば、「自宅に眠っているカセットテープをデジタル化しませんか」といった触れ込みで、カセットプレーヤーとメモリースロットを一体化したような機器が新品で売られています。

確かに、若かりし頃に録音したカセットテープを手軽に再生できるのは素晴らしいことだと思います。但し、こういった格安の機器を使うことによって、カセットテープ全盛期の音質を再現できるわけではなく、音質はイマイチで、なおかつせっかくの懐かしい貴重なテープを痛めてしまう恐れすらあります。できることなら、テープを傷めずに高音質で再生できる適切な機器で使用するべきだと思います。

 

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国産の高品質カセットテープ機器の復活に期待

では「適切な機器」を使用するためにどうするのがいいのかというと、私自身も完璧かつ実現可能な答えを持ち合わせているわけではありません。新品で売られている格安のカセットテープ機器は音質面や信頼性の面で今一歩です。

だけれども、高性能の新品ハードはもう売っていません。となると、中古のオーディオショップあるいはネットオークションで、正常動作を謳うハードを探すのが、高音質を堪能することやテープを傷めないためにも理想的だと言えます。しかし、正常動作を謳う機器は、価格面でのハードルが高く、入手するのに数万円もするのはザラです。簡単に手を出せる人ばかりではないと思います。

一方、スマートフォンやパソコンなどは中国をはじめとする新興国製のものが幅を利かせており、格安かつ高品質なものが世界を席巻しています。ではカセットテープ機器はどうかというと、全盛期においてもほぼ日本製が世界を席巻していました。アイワ(AIWA)のカセット機器など、一部アジア諸国で生産していた製品もある(確かフェアメイトのハードも海外製だったような…)ものの、高性能な製品は日本製が多かったのが実態です。つまり、カセットテープ機器の高性能精密技術は、あまり海外に出ていかないままの状態で、そのままMDやソリッドオーディオに移行していったわけです。

つまり、今、再び、古き良き時代の高音質カセットテープ技術を駆使した復刻版カセットデッキや復刻版カセットヘッドホンステレオを登場させるとすれば、それは国産メーカーをおいて他にいないと言えるでしょう。しかしながら、当時の生産ラインはもう影も形もありませんし、技術者も引退しているはずです。そういうニーズがあったとしても、もはや造ることができないのかもしれません。それでも、やはり高性能カセットオーディオ機器の再登場には期待してしまいます。

幸いなことに、我々のようにカセットテープ全盛期を知る人ばかりでなく、カセットテープを知らなかった若い世代の中にも、カセットテープに魅了される人が増えているようです。現に、昨年暮れには、ラジカセやヘッドホンステレオのコレクションを展示するイベントが池袋で開かれ盛況となるなど、明るい話題もあります。くどいようですが、カセットテープ大国だった日本が造る高性能機器の再登場に期待を寄せたいですし、それが実現することで、カセットテープによる素晴らしい音楽体験がより多くの人に認知されてファンが増え、結果として良質なハード機器の生産につながっていくことを望みます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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